研究レポートReport

第46回 内観力 ~からだの声を聞く~ No .7 『末端部の制御の意味と末端部の柔軟性』

先月、研究レポートを書こうとしたがパソコンを前に指先が動いてくれなかった。

その意味は、先週の出張中の移動時に理解できた。

末端部の使い方を身体から教えてもらっている最中であったのだが
なかなか腑に落ちてこなかったものが、ある動作をした時に一瞬で体感できて嬉しかった。

同行してくれた安井章泰君にお伝えしたところ同じ反応を示してくれたお陰で確実になった。


”末端部の制御の意味”

初めて骨ストレッチを行うかたによく聞かれる質問は、『どうして、親指と小指を付けるのか?』が非常に多い。
日常生活では、ほとんどしないポーズだがら余計に不思議がるのも分かる。

最初の頃は、末端の親指と小指を付けることで末端部を制御することで体幹部を優先的に動かしやすくすることで
体幹部で発生した力を末端部の腕や足に力を流してやることで力の発生と伝達をよりスムーズに行うことが出来ると説明をしていた。

当時の私の内観力では、肩甲骨や骨盤の可動範囲を広げさせるくらいの意識レベルでお話させて戴いていた。
しかし、最近では、鎖骨や胸骨、肋骨まで意識して動かせるようになってきた。

いや、誤解を恐れずお話すると以前から自然に動いてくれていたのだ。
そのこと自身に気付いていなかっただけである。

私の経験から言わせていただくと、筋肉や関節が動いていることも間違いのない事実であるが
それと同時に、無意識で骨も動いて動作を助けてくれているのだ。

この無意識で動いてくれている部分をピックアップして
いかに意識的に動くことの強化をして習慣づけたら何時の間にか又、自然と動いてくれるようになる。

”どの部分に、どんな意識を持って動かすかで動作の次元が進化する!”

手首や足首の骨の上を親指と小指を押さえながら身体を動かすことで
否が応でも体幹部が働かなければ動くことが出来ない。

日常生活では、手や腕、足が当たり前のごとく先に動き出すので
体幹部の出番がほとんどないのが現実である。

これは、私の講習会に出たことのある方であれば全員知っている。

ただ歩いただけで身体が硬化してしまい腕の回り方や前屈などの柔軟性が奪われてしまう動作を
無意識で行い続けている現実に気付いていない方がほとんである。

歩く動作においても末端部主導の動作から体幹部主導の動作に変えることで
身体の変化は劇的に変わる体験をされている。

歩く、立つ、座るの基本的な動作ですら無意識で末端部主導の動作をしている人間に
いきなり体幹部主導で動けと言われたところで出来ないのが当たり前である。

初期の頃は、ただ体幹部を前傾させて身体の重さ(体重)を上手く活用することが入り口であるが
上達してくると今度は、骨を活用して『骨身に任す動き』に進化していく。

その動作に導いていく為にも、意図的に末端部である手・足を制御して末端部主導の動作の習慣を止めさせて
体幹部主導の動作の習慣をつけていくことが肝要である。

ほんとうの身体の使い方を体得したければ、骨ストレッチをして体幹部主導の動きを覚えて
身体に動かされながら感覚を磨いていくと近道である。

骨ストレッチを続けていくと必ず壁にぶち当たる。

それは、硬化してしまった筋肉の存在である。
間違った筋肉の鍛え方をすればするほど骨や関節の可動範囲に影響を及ぼす。

この改善方法は、いたって原始的であるが硬化した部分をほぐしていくしかない。

正直、かなりの痛みを伴う。
生半可な気持ちでは決して出来ない代物だが、、、

しかし、その痛みこそ身体の悲痛な叫び声なのだ!

身体は声に出してしゃべれない分、痛みで教えてくれている。
この痛みを経験した人ほど、身体との向き合い方が変わってくる。

そして、痛みに耐えながら今まで積み重ねてきたトレーニングの本当の答を知ることで
なぜ、怪我したのか? なぜ、いい動作が出来なくなっていたのかを改めて理解する瞬間でもある。

自分自身の身体に、どれだけ理不尽な扱いをしてきたかを知ったとき
人は、ほんとうの身体の使い方に目覚める。

硬化した身体が柔らかい柔軟な筋肉に変わってくると
必然的に骨や関節の動きが滑らかに変わる。

すると骨ストレッチの効果がまた向上することで
いろんな動作や立ち居振る舞いが改善されて効率のいい状態でいられるようになる。

私の勝手に創った造語であるが『脱皮時期』が必ず訪れる。

その『脱皮時期』に必要な硬化部分を改善していくことで
身体から余計な動作が削除されていき本来の自然で無理ない身体に負担の掛かりにくい動作が出来るようになる。

そうすると段々、身体の中心部にある骨から動けるようになってくるのである。

骨ストレッチの正式な名称は『芯動骨整体』であるが
身体の芯にある骨を動かすことで體(からだ)が整うという意味がここに秘められている。

現在、流行っている体幹トレーニングは末端部に多大な負担をかけてしか出来ない方法であり
どんなポーズを観ても、手や腕、足にかなりの負担をかけているだけで体幹部そのものに効果的な刺激が伝わっているものは非常に少ない。

しかも、固定された静止状態で力を発揮するトレーニングをいくら積み重ねても
スポーツの世界は、動きながら力を発揮しなければいけない場面ばかりで現実に使えるシーンは皆無に等しい。

まして、筋肉を緊張させたまま力を出すことなど冷静に考えれば意味のないことである。

残念ながら体幹部を固めてしまうと骨を動かせる身体からは遠ざかる一方である。
また、犠牲になっている末端部が固くなればなるほど実は体幹部は動きにくくなるのが事実である。


”末端部の柔軟性”

最近、末端部の柔軟性がいかに体幹部を有効的に使えるかがよく分かってきた。

特に、手首や足首が柔らかい方が体幹部との連動性が向上する。
その中でも手足の指が柔らかくてよく動く方がなおいい。

現代人は、パソコンや携帯、車の運転など指先が緊張する動作があまりにも多い。
そのため、知らず知らず手の指先がコリ固まっている人ばかりである。

また、スポーツ選手では前述の体幹トレーニングや腕立てや
過度のウエイトトレーニング等で同じくコリ固めてしまっている。

身体というものは実に面白く出来ていて
手首や足首が柔らかい方がいい動作ができる。

首・手首・足首のこの三箇所はできるだけ柔らかい方がいいのである。

その理由として、これらの部分の重さを有効的使えると
とんでもない動作が出来るからである。

身体の端々にあるこれらの部分を『おもり』として使うとより自然な動作が出来る。

言葉では上手く伝わらないと思うがこの『おもり』を上手く使えると
スピードとパワーの出方はとんでもなく向上するのである。

”身体を細分化していくことで連動させることが出来る”
私の尊敬する甲野善紀先生の言葉を身に沁みて体感している。

この辺りの感覚の話は言葉に変換することが難しいのであるが
先日、安井章泰君に私のスーツケースを持って歩くときにある助言をして歩いてもらうと
スーツケースを持って歩く方が楽に歩けることを体感してもらった。

手首と体幹部を連動させて歩いた方がよりよく自然体で動けるのだ。

現在、このメッソッドをもっと簡単に分かりやすく出来るように改善している。
この身体の使い方を知ると安易なトレーニングで末端部を固めることが出来なくなるであろう。

私が分かってきたことは、よりよく体幹部を効果的に活用するのであれば
出来るだけ末端部を柔らかくしておくことがもっとも重要である。

このことは無邪気に遊び、縦横無尽に動き回っても怪我ひとつしない子供の手を触ってみれば
誰もが簡単に分かりえることである。

我が子の手を触る度に教えてもらっている。


        感謝

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