日本産婦人科学会専門医
日本医師会認定 健康スポーツ医 前田洋一 様

私は20数年来産婦人科診療に携わっております。
私自身の傷病体験と医師としての見地から骨ストレッチの有益性についてお話しします。

・頸椎ヘルニアで辛かった数年・・・

私が骨ストレッチの事を知ったのは、5年前の事でした。
8年前に発症した頸椎ヘルニアの治療に通っていた気功治療院にて紹介された本がきっかけでした。筋肉よりも骨をつかえという内容で、気功のゆるめる作用と同じだねとの御意見でした。
私がヘルニアを発症した当時、ジムで広背筋のトレーニングをしており、当直室で枕の高さが合わず寝違えることも多く、ある朝両手の痺れ・脱力感を感じました。診療器具を扱っていても疲労感が強く、症状が1週間以上続いたため整形外科を受診しました。
握力は元々の1/3の15kgまで低下しており、MRIにて頸椎ヘルニアと診断されました。
投薬を数週間受けましたが握力は回復せず、整体での治療を考えました。バイタルリアクターという脊椎を緩徐に動かす治療で圧迫はとれたのか握力は回復しましたが、通院を続けても首の痛みは取れない状況でした。日常生活で振り向いてもズキッと痛み、腰から振り向くといったぎこちない生活を送っていました。藁をもすがる思いで治療法を検索し、隣県にある気功治療院の治療記事をみつけ門戸をたたきました。

・頸椎ヘルニアの原因は姿勢からくるものだった!

元々私のヘルニアは外傷性ではなく、慢性的な肩こりに筋トレをかぶせた結果、背骨付近の筋硬化が進み頸椎の動きを悪くしてしまったようでした。肩周りの筋肉の緊張をとることで治療効果が表れるかもと治療を受けました。すると痛みは初回の治療で軽減し始め、慢性的な鋭い疼痛は少なくなりました。週1で2か月ほど通院し、だいぶ楽にしてもらいました。体質改善のため同治療院で開催されていた気功体操教室に毎週通いました。日常生活にだいぶ支障はなくなりましたが、冬場になると筋肉が緊張するのか手に痺れを感じ、1回1万円はする治療を数回受けながらその時期を乗り切っていました。
そんな生活の3年目に骨ストレッチに出会いました。

・骨ストレッチで體の柔軟性が向上した!
早速書店で本を購入し手首肩甲骨メソッドを実践したところ、とても肩周りが気持ちよくなりました。気功体操に通ってはいましたが、身体の硬い私には効果を感じにくい動きも多く、柔軟性向上は緩徐でした。骨ストレッチを自宅で実践し解れを感じたので講習会に参加することにしました。講習会では指導員の先生の具体的指導の下、前屈で手が床につかなかった私が、床に手がつくようになりました。

・骨ストレッチで動き始めた體には積年の硬化による痛みが発生する時期があった。(個人の見解)

嬉しくて講習会に通ううちにいろいろな動きを教えてもらい、可動域が広がると供に各筋肉のツッパリを感じるようになりました。数か月目のランニング向けの講習会の後にはとうとう腰痛を引き起こしてしまいました。しかしながら、筋肉の硬化が関節の動きを制限し痛みを引き出すという過去体験のあった私は、これは下半身や背中の筋肉の硬化が骨や関節の動きを制限し痛んでいるのだと感じていました。日常生活に支障は少なかったので、無理なく周囲筋を解しながら、骨ストレッチを辛くない範囲で続けました。数か月で痛みは軽減し、ダイナミックな動きの骨ストレッチもできるように回復しました。身体の可動域は以前よりも広がっていました。(上記は私自身の場合に基づく意見なので、痛みに対しては医師の診断を仰いで悪性疾患のないことは確認してもらいましょう。)
気づけば、冬場の手の痺れも無くなっており、気功教室にも県をまたいで通わなくて済むようになっていました。

・柔軟性が向上して運動習慣が身についた!

身体の柔軟性が向上すると身が軽くなり、体を動かしたくなります。働き始めてから運動習慣の少なかった私でしたが、水泳を始める為ジム通いを数年ぶりに再開しました。以前は力んで25メートル泳いだだけで息が上がっていましたが、楽に體が使えるようになるにつれ現在は息が上がりにくくなっております。
體が硬い時は、負担の少ない姿勢をとってもそれまでの癖で硬化した個所が引きつれ、その姿勢を続けるのが苦痛でしたが、解れてくると自然な姿勢が苦痛でなくとれるようになり、その結果体にかかるコリの負担も軽減し楽になります。身体の柔軟性があがると、今まで取っていた無理な姿勢が逆に苦痛になり、負担の少ない姿勢に導かれるので、疲れにくく好循環となります。

・生活習慣による姿勢の変化が體を硬化させていた!

幼少期の運動不足、受験勉強やテレビゲームといった生活習慣が私の姿勢の歪みを生み、ずっと身体に負担をかけていたのだなと思います。仕事柄新生児の分娩に立ち会う機会があり、赤ちゃんの診察もしますが、赤ん坊は本当に体が柔らかいです。成長の過程の中で本来の柔軟性を損なってきたのだなと感じます。年をとると体が硬くなるといいますが、それは使い方により歪んで硬くなるのではと考えます。事実私の体は、すでに姿勢習慣により硬かった中高生の頃よりも、現在可動域が広い状態です。40半ばを過ぎてもまだ硬い筋肉を解せば柔軟性は上がり、インナーマッスルの活動が増え代謝も上がり、本当の意味での若返りが可能ではないかと考えています。(近年、若年者でもロコモといった運動障害が指摘されていますが、幼児の状態からも柔軟な体=若さではないかと考えると、発育環境は大切なのだなと感じます。)

體が楽になれば心が和らぐ!

また体が解れるとともに、気持ちの柔軟性も上がるように思います。以前よりおおらかな気持ちとなりいろんな考えが受け入れられるようになっていますし、日々を楽しめる気持ちが向上していると思います。
自分自身の體が解れ、身が軽くなり、心も楽になった体験は、自身が診療をしている上で大変参考になりました。以前の私と同様に生活姿勢習慣で体の不調を訴えている方は多いと思います。もちろん病気の診断が大切ですが、病因が見つからない方は體の使い方を意識することにより不調が改善される可能性は十分あり、習慣改善が大切だと実感いたしました。

日々の習慣と骨ストレッチで姿勢を改善して楽な體に!

習慣改善は短時間では改善しにくいかもしれませんが、根気強く取り組むことで可能だと思います。
私は骨ストレッチで體が動くことが心地よく感じて、動きがよくなる喜びを感じることで続けてこられました。結果として以前より楽な姿勢が取りやすくなり、姿勢習慣による慢性疲労は改善しつつあると思います。
今後も自身の體の変化に喜びを感じながら骨ストレッチで體を動かしていき、体調不良の方のアドバイスの一環ともなればと考えております。