研究レポートReport

第33回 内観力 『高岡 英夫さんのゆる体操を知る。』

野口体操を知ってから毎日の生活が楽しくなった。

普段の生活の中で行う動作も何気なく行うのと、
身体を意識しながら動かすのとでは身体の疲労度が違ってくるのだ。

例えば、"立つ"という単純な動作。

今までは、どちらかというと筋肉主体で立っていたのが
"骨を意識して立つ"という感覚で立っていると筋肉を使わないので楽に立って
られる。 

まったく筋肉を使っていない訳ではないが負担のかけ方が変わるので常に弛んで
いられるのだ。

イメージ的にいうと『骸骨(がいこつ)』。

小学校の理科室にある骸骨の模型は、幼きころは少々苦手であったが
この頃から、骸骨の模型を観ることが楽しくなった。

よくよく考えてみたら、骨は身体の中心にある訳だから『軸』になる。
その『軸』を様々な呼び名で言われてきたが正直、ボヤッ~として不確かなもの
であったが
野口体操を体験してからは、身体の中にある『骨』を意識するようになり
感覚的なものかもしれないが意識的に『骨』を動かせるようになれたことは大き
な進歩であった。

ひとつひとつの動作をただ単に動かすのではなく
『骨』を意識して、『骨』から動かすという動作を続けることにより
今までとは明らかに違う動作を出来るようになる。

『骨』を意識的に使えるようになるということは
筋肉をあまり使っていない状態だから瞬時に筋肉を使える。
楽にしている状態だからこそ必要なときに必要な動作がよりよく出来るのだ。

野口体操で一番好きな動作は『背骨』を動かすこと。

『背骨』を動かすというよりは、『背骨』に動作を任せるといった方がいいのか
もしれない。
単純に『背骨』を動かすといっても、実はいろんな動かし方がある。
私の場合、いろんな『動物』の動きを真似することから始めた。

真似をする動物になりきる!

真似をする動物の動作をじっ~と見詰めて目に焼き付けた後、
その動物の動きを行ってみることで身体のいろんな部分を使えるようになってく
る。

特に、四足動物の動作は最高で、手足の動作を制御するので自然と体幹での動作
になる。 

その動作を筋肉で行おうとするより『骨』を主体として使う動作にすると身体か
ら面白い反応が出てくるのだ。

筋肉で行うと身体がすぐに固くなり動作を長くすることが出来なくなるが
骨を意識して行うと身体が非常に柔らかくなり動作を楽に長く行うことが出来る。

(このことが後日わかるミラーニューロンに繋がることになる。)

また、腹筋に力を入れて行うと動作がぎこちなくなり、すぐに疲労困憊になる。
その逆に、腹筋を緩めて行うと動作が滑らかになり、いつまでも続けることがで
きる。 


人間が意識的に身体を動かしている状態と無意識的に動かされている状態がある
のだが 

今まで、何気なく動いてきた動作そのもの中に『凄い動作』が隠されていること
がある。 


この気づきに気づけるかどうかで身体操作のレベルが変わる。

私の勝手な解釈なのでお許し願いたいのだが
無意識レベルで行ってきた動作を認識し(気づき)、意識レベルを向上させて動
作の強化を行い、
今度は、その動作が意識しなくても出来るようになれば無意識レベルで自動的に
身体が行ってくれる。

(2010年の現段階では、この感覚を実体感することが出来ている。)


その後、高岡 英夫さんの『ゆる体操』を知った。

面白い体操で、筋肉をゆるめるで『キ・ゆる』、骨をゆるめるで『ホ・ゆる』、
臓器をゆるめるで『ゾ・ゆる』。
身体をゆらしながら、ほぐしていく際に身体の各部分を意識しながら行うことに
より効果を高めてくれるという。
実際に行ってみると非常に身体がほぐれてくれる。

私は、このゆる体操の臓器をゆるめる『ゾ・ゆる』が目から鱗であった。

今までは、筋肉や骨に関心を寄せていたこともあるが臓器のことは頭になかった

人間の身体の中に入っているもの全てをほぐすことが大切なことなんだと改めて
勉強になった。

確かに、西野流呼吸法を習っていたときも、やはり内蔵をほぐすことが練習メニ
ューに入っていた。
人間は忘れる動物とよく言われるが本当だと思った。

野口体操を習得していたお陰で、ゆる体操もを行うこともスムーズに出来た。
このことがきっかけで更に、自分の身体の内側を意識するようになった。
自分自身の身体を内側から意識することで必然的に動作レベルも飛躍的に向上し
てきた。 

そして、身体の内側を意識する練習を積み重ねることによって分かったことがあ
った。 


それは、身体は『空だ』ということである。

身体の中は、確かに骨や筋肉や内蔵があるのだが
皮膚1枚の中にあるものを全部まとめてしまった意識にしてしまうと
身体の中がまるで『空っぽ』のような感覚になってしまったのである。

指導者の方々がよく、"もっと身体全体を使わないといけない!"と云われてい
るが
実際にこの言葉の意味を正確に捉え、しかも、本当に身体全体を使えるようにな
るトレーニング指導をしている人は
どれくらいいるのだろうかと思ったのだが、おそらくそんなにはいないと思う。

身体全体がひとつになり、いろんな部分が互いに協力しあって動作が生まれてく
るはずなのに
パーツ、パーツだけで見てしまって全体で捉えていない人の方が多い。

そして、身体の繋がりを体感しているのと
していないのとでは生まれてくる動作は、"天と地の差"になる。

自分自身の身体を自由自在に動かせるようになりたければ
まず、自分の身体を自分の意識で動かせるようにならなければ話にならない。

ほとんどの方は、まるで禅問答のような捕らえ方しかしていないのだが
自分の身体を自分の意のままに動かせている人は数パーセントだと思う。

何のためにある筋肉なのか?、何のためにある骨なのか?、
どういった使い方をするのが本当に正しい身体の使い方なのだろうか?


この問いの答えが後になって、私の目の前に現れてくることになる。



次回の内観力は、『甲野 善紀先生の足音』です。11月10日の予定です。

<< 目次に戻る

このページのトップへ