研究レポートReport

第35回 内観力 『骨整体の誕生』

NHKの『プロフェッショナル』という番組を見ていたときの事であった。

ある、おもちゃ玩具メーカーの社長さんが機動戦士ガンダムを超えるアニメを作りたいと
デザイナーの方に、いろんなモビルスーツを書かせていたシーンを見たときにフッ~と思ったことがあった。

"なんで、アニメのモビルスーツは各関節部分をあんなに派手に書くのだろうか?"

そう思いながら、何気なく右手首の関節を左手の親指と人差し指で押さえながら、
横向きにブラブラと振っていたのだが、右肩が自然に下がり始めて、楽にほぐれていくのが体感できた。

すぐに右腕を回してみると軽くて大きく回るのでビックリしてしまった。

すかさず、反対の左腕を回してみると重くて回りにくかった。
今度は、左手首の関節を右手の親指と人差し指で押さえながらブラブラと横向きに振ってみると
やはり、左肩が自然に下がり始めて、楽にほぐれていった。
左腕を回してみると、右腕と同じように軽く、しかも大きく回る。

その瞬間に、ある言葉が頭の中を過ぎった。

"節々が痛くなる"

なるほど、節々か~と思いながら今度は、肘の関節を押さえながら前後に腕を動かしてみると
先程の手首を押さえて動かすよりも、もっと肩関節周りがほぐれていくのが瞬時に体感できた。

腕を回してみると、手首の関節を押さえた時よりも更に軽くて大きく回るのに驚いてしまった。

これに味を占めてしまい、今度は身体中の各関節を押さえながら動かしてみると
今までに体感したことがないくらいに身体がほぐれてしまったのだ。

理屈は分からないのだが、なぜか身体が瞬時にほぐれてしまい
かつ、動作を行うのがスムーズに楽に出来てしまう。

興奮が醒め止まぬ中、テレビを見ながら頭の中は、この事で一杯であった。

翌日、早速、家内や子供、母や兄弟に体験してもらったのだが
全員、同じ結果が出て、あまりのほぐれ方にビックリしていた。

スポーツケア整体研究所に来るお客様にも、
体験して戴いたが、やはり結果は同じであった。

現実に同じ結果は間違いなく出るのだが理屈が分からない。
この式の答を知りたくて、佐久間 紀郎先生のお宅に行った。

"この手首の骨は、一体、なんの為にあるのですか?"

突然、こんな質問をしたので逆に理由を聞かれた。
そこで、今までの経緯をお話した後、実技を体験して頂いたが
佐久間先生も、その効果に大変驚かれた。

"今までに見たことも聞いたこともない新しい方法だな!"

佐久間先生ほどの方でも分からないと云う。
今度までに、いろんな文献や資料を探してみると仰っていただいた。

理屈や理論的なことは、そのうちに分かってくるだろうと思い、
私は、仕事先で、このメソッドを困っている方々に指導することに専念した。

現場で直接指導をする私の目の前で、
体験される方の身体がみるみる変わっていく姿を見れば見るほど確信に変わっていった。 



それ以上に、痛みやコリで悩んでいた方のお顔が笑顔になることがとても嬉しかった。 



実践した結果、100%といっても過言ではないくらいに結果が出たので
このメソッドを世の中に広めていこうと決心した。

どのような形で広めていこうと考えていた時に、
ある分野でお世話になっていた方からDVDを作成する会社を紹介していただいた。
詳しいお話を聞いてみると、価格的な問題もクリア出来そうだったので依頼することにした。

このメソッドの名前を決めることになった。

手首の骨を押さえながら動かすことで身体が自然とほぐれていき
身体のバランスが整うことから、『骨整体』と名付けた。


しかし、DVDの撮影の一週間前に考えられない出来事が起こった。


撮影の前に、佐久間先生のお宅にお伺いしてDVDの内容を確認していただいた。
なるべく難しい種目をさけ、簡単な動作でかつ効果が実感できる種目に絞っていた。

そこへ、佐久間先生の奥様から質問を受けた。

"手首の骨(内果・外果)を押さえる親指と人差し指の押さえる力はどれ位にすればよいのか?"

考えてもみなかった質問に戸惑ってしまった。
奥様が言うには、強く押さえればいいのか、それとも弱く押さえればいいのかも
指導した方がいいのではないかと提案してくれた。

指の使い方ひとつで間違った方法になることは避けたかった。

おもむろに腰を上げた佐久間先生が、本を何冊か持って戻ってこられた。
その本は、仏像の写真が載っているものであった。

仏像の指の形を観ながら、ヒントになるものはないかとページをめくりはじめた。

しばらく本を観ていた佐久間先生から、
『あんたも見てみるかい~』と渡された。

1冊目の本を見ながら、仏像にも様々な指の形をしている事に新鮮さを感じながら
一体、何の意味があって、このような形になっているのかを知りたかった。

そして、2冊目の本を見ていたときにフッ~と目に止まったのが
奈良県にある中宮寺の"弥勒菩薩"であった。

手にした本に載っていた"弥勒菩薩"の写真を見た私は、
あごに指をあてている写真の角度から、なぜ、"弥勒菩薩"は親指と小指をくっ付けているのだろうかと思った。

《後日、この指は実際には付いていないことが判明する。》

その直後、尿を催し便所をお借りして用を済ませた後に廊下で何気なく親指と小指をくっ付けて、
骨整体をしてみたら今までのほぐれ方とは尋常ではない位のスピードで身体がほぐれていくのに驚いてしまった。

『なんじゃ~これは~!』と廊下で叫び声を上げた。

すぐさま佐久間先生に、"弥勒菩薩"の写真を見ていただいた後、
親指と小指をくっ付けた状態で骨整体を行っていただくと
やはり、同じ効果を体験していただくことが出来た。

奥様や長女のみのりさんにも協力してもらい
親指と小指で押さえてもらいながら骨整体をしていただいたが同じ効果が出た。

早速、他の指でも効果測定をしてみようと実験してみたのだが
親指と小指に勝る結果は出なかったのである。

すると、佐久間先生から、
『もしかしたら、押さえる側の指も親指と小指の方がいいのではないか?』と仰られた。 

好奇心一杯の気持ちで試してみると明らかに違いが分かる結果が得られた。

押さえる側の指も他の指で効果測定をしてみるのだが
やはり、親指と小指に勝る結果は出なかった。

奥様が親指と小指で押さえながら、
『この押さえ方だと力を入れようがないよね~』と仰られた。

改めて、意識して行ってみると確かに力を入れようとしても入らない。
しかも、このポーズをしただけで身体全体が弛み始めるから不思議である。

DVDの内容に入れる予定の骨整体の種目を
全部、親指と小指で行ってみたが次元の違う身体のほぐれ方に感動してしまった。


平成19年4月22日 こうして"骨整体"は誕生したのである。



この研究レポートを書く数日前に、月刊『秘伝』のS氏とお会いした時に
昔の仏像は、なぜ、肘から下の部分が切り落とされているものが多いかという話題で
密教がらみで『印』の形の意味を知られることを恐れたものが切り落としたという興味深い話をお聞きした。
また、古武術の甲野 善紀先生の術理の中でも指の使い方ひとつで身体の動かし方が変わることを仰っている。
我々が、普段、何気なく使っている指であるが、巧みに身体を動かす為に凄い重要なポイントになっていることは間違いないようだ。
2010年の現段階では、手の指や足の指が体幹部にかなりの影響を及ぼしていることが分かってきている。
このことは、これからの研究レポートに必ず書いていきたい。



次回の内観力は、『親指と小指は日本人の文化』です。11月30日の予定です。

<< 目次に戻る

このページのトップへ